なにやら同期がそろいもそろって卒業するらしく、卒業生ブログの執筆を頼まれた。すでに学部を卒業し大学院に進学した自分としてはかなり変なタイミングでの依頼ではある。内容はTUFS FCでの活動を振り返ってや、後輩やまだ見ぬ新入生に向けてのメッセージだそう。ただまあ、こんな機会でないとサッカー部での活動を振り返ることはないだろうから、とりあえず思ったことを徒然と書くことにする。
今現在外大大学院修士1年を終えようとしている。モラトリアムを満喫した学部生活に比べると、研究の楽しさは2倍、辛さは10倍といったところだ。そもそもなぜ大学院に進学したかというと、コロナで留学が吹き飛んだうえ、就労意欲が完全に欠落しているからで、研究者になりたかったからではない。大学生活楽しいし、社会なんて出たくないよ~でぬるっと入学した次第である。現状かなり苦しい「入院」生活が続いているが、その理由はありがたいことに本当に楽しい大学生活を満喫してしまったからでもある。
この楽しい大学生活の中にTUFS FCの活動がどこまで入るかを考えると、だいたい5分の2ぐらいじゃないかと思う。偉大な先輩カズヤさんのとあるパンチラインがきっかけで入部したものの、モチベーションの低下や繰り返すケガなどにより在籍した期間はだいたい2年に限られた。ほかの同期と比べると最もこの部活にコミットしていない人間といえるだろう。それでも数えきれない思い出をもらった。つらつらと書いても仕方がないので年度ごとに一つずつ書いてみようと思う。
1年生。東京でのつまらな生活への不安に駆られていた4月、2個上の先輩方と衝撃的な出会いですぐに入部を決めた。受験勉強で完全に落ち切っていた体力も8月には元に戻り、そろそろ活躍するか~と思っていたところでの靭帯断裂。東大グラウンドに足を踏み入れるときには足首のストレッチを入念に行うことをお勧めする。許せねえ。
2年生。「もしかしたら自分は何者にもなれないまま人生を終えるのではないか」という漠然とした不安(これを大学生病と呼んでいる)に駆られ、部活を半年ぐらいお休みしていた。この病を罹患した大学生は急に写真を撮り始めたり、1人旅行を計画したり、なんとなく面白いことを探し始める。新しく何かを始めることは否定しないが、趣味がその人を規定することはないのでほどほどした方がいい。そんなこんなで夢遊病にかかっていて、クソつまらん人間になりかけていた。そんな自分を救ってくれたのが当時のキャプテン響さんだった。「とりあえず今日一緒に西町行こうぜ」の一言がなかったらと思うと冷や汗が出る。マジで感謝!
3年生。とにもかくにもコロナに振り回された一年だったが、個人的には一番充実していたのではないかと感じる。20歳になってはじめてチームのためにプレーすることを覚えたからだ。具体的な変化としては無駄なドリブルをやめ、ちゃんと前線からプレスをかけるようになった、ただそれだけ。こんな些細な変化でチームの勝利を心から喜べるようになったし、練習中試合中の思考もポジティブなものに変わった。ガクチカは前プレ、鬱っぽい気分にも前プレ、とにかく前プレだ。中学高校の刷り込み教育で言われる「献身」とは異なる、自ら気づいた価値がそこにはある。それに気づくことができただけでも自分の大学サッカーに意味があったと思う。全人類は自意識を肥大化させる筋トレも、仕事に体を馴致させるゴルフも、無意味な飲み会も自己啓発もすべてやめて前プレしよう!
思い出を語っているうちに怪しいセミナーになってしまったが、後輩や新入生に伝えたいことは、「何かを継続して見つけた価値は、新しく何かを初めて触れた価値よりも尊い」ということである。大学に入って自分が一体何者なのかとか、何か始めなければだめなんじゃないかとか、もっと他に面白いことがあるんじゃないかとか様々な考えが巡ると思う。実際には何者でもないし、何もしないのは(社会一般からして)不健全だし、自分がやっていることのほかに面白いと思うかもしれないことはたくさんある。しかし、本当に深いところにある価値は、小さな変化の継続でしか獲得しえないのではないか。人生をガラっと変える経験は大概ヤバいので気を付けようということ。
そしてもう一つは、「大学の授業をちゃんと受けて、自分の関心を見つけよう」ということである。アカデミックの価値は、正しさがある程度担保されているところにある。適当に聞いていればつまらないものかもしれないが、授業を行う教授は人生をかけてそのテーマに取り組んでいることがほとんどで、ひとりの人間をそこまでのめりこませる魅力が詰まっているはずだ。お前のこと言ってんだぞ縁!!!
書き初めに比べるとかなり熱がこもった文章になってしまったが、最後に感謝を述べたい。18歳の坊ちゃんを成長させてくれたTUFS FCにはとても感謝している。そこには先輩だけでなく、同期や後輩、OBの方々、辞めたやつ、応援してくれるたくさんの人々が含まれている。これからもその一員として陰ながらTUFS FCを応援したいと思う。ありがとうございました。
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